株式会社アビタス/株式会社東京日本語中央学院

「資格取得支援の学校」から「キャリア開発支援企業」へ

国際資格を取得するための教育サービスを提供する株式会社アビタス。
さらなる成長を実現すべく、ファンドを受け皿とした事業承継が行われました。経営陣とともに組織改革に参画するアドバンテッジパートナーズ(以下、AP)の束原俊哉が、事業拡大に向けての具体的な施策や今後のビジョンについて語ります。
(2019年11月インタビュー記事を元に編集)

この記事のポイント

  • 顧客目線のサービス開発で、企業価値の向上を。
  • 成長に欠かせないのは各ステークホルダーの合意形成。
  • 目指すは、リカレント教育のプラットフォーム。

基本情報

  • 投資時期:2019年5月〜
  • 業種:教育サービス
  • 企業タイプ:非上場企業
  • 背景:創業者からの事業承継

教育サービスは、大きな可能性を秘めている。

米国公認会計士をはじめとした国際資格を取得するための教育サービスを提供してきた株式会社アビタス。長らく業界ではシェアNo.1の地位を守ってきましたが、創業オーナーはさらなる成長に向けて、外部からの資本と人材の受け入れが必要と判断。関連会社である東京中央日本語学院(以下、TCJ)と併せての事業承継を検討していたところ、APがサービスを提供するファンド(以下、APファンド)が投資をすることになりました。

私たちは以前より、教育市場は今後もますます拡大していくと予想していました。社会環境が急速に変化する現代においては、学生のみならず、ビジネスパーソンであっても学び続ける必要があるからです。投資前に実施した市場調査でも、資格をスプリングボードにしてキャリアを切り拓こうと考える人が増加傾向にあることが判明しました。TCJにしても、アジアからの人材流入を背景に、需要の拡大が見込めます。こうした追い風をしっかりとキャッチすれば、アビタスもTCJも必ず成長を遂げられる。そう判断し、創業オーナーにも再出資していただいた上で、4〜5年をかけて改革を進めていくことになりました。

ステークホルダーの意思統一が、成長のカギ。

組織力を底上げし、アビタス・TCJのポテンシャルを最大化するために重要なのは、株主、従業員、経営陣といった各ステークホルダーのベクトルを揃えることです。そのためには、どのような組織がふさわしいのか。意思決定のあり方はいうに及ばず組織構造、人事制度、理念などのソフト面にまで踏み込みながら、組織の刷新を進めます。

会社ロゴと経営理念のリニューアルを目的とした、社員参加型のワークショップにも取り組んでいます。会社ロゴや経営理念は、会社が顧客に対して提供していく価値(=企業価値)の象徴です。いわば会社にとっての「憲法」のようなもので、意思決定の何よりの基準になります。これを社員の合意の上で再定義することは、オーナーの判断だけに依存しない組織的な経営に向けた第一歩となります。

運営体制の見直しをはかったところ昨対比110%に。

プライベートカンパニーにパブリック性を付与するガバナンス強化も、私たちの仕事です。会社の業況をしっかりと情報開示できる体制を設けていきます。情報開示によって経営の透明性を高めると、社員一人ひとりが経営課題を意識しながら行動するようになることも大きなメリットです。

これら取り組みを通じて運営体制を見直す中、投資後の業績は、想定通り昨対比増加で推移しています。順調な走り出しと言えるのではないでしょうか。

豊富なノウハウを生かして、常に最善手を。

アビタス・TCJの企業価値をさらに高めるために、数億円規模のIT投資も計画しています。特に注力していくのが、受講者一人ひとりに適した教材や教育サービスを提供する「アダプティブラーニング」の導入です。これまでは個々の生徒やサポートスタッフの判断に委ねられてきた習熟度の診断をITによって自動化し、最適な課題を提供できる仕組みを設けます。APが蓄積してきた顧客視点でのサービス開発ノウハウを生かし、アビタス・TCJならではのアダプティブラーニングを形にする予定です。

マーケティングの改善も、今後の課題です。まずは個人顧客の興味、関心を今まで以上に喚起するメッセージの開発を急ぎます。一方、これからは個人が自らの意思で資格を取得するだけではなく、勤務先からの働きかけによって資格を取得するケースも増えていくでしょう。それを見越して、法人をターゲットにしたマーケティング戦略も構築しなければなりません。マーケティングにおいても、さまざまなプロジェクトで積み重ねてきたAPのノウハウを生かします。

リカレント教育のプラットフォームをつくりたい。

本プロジェクトの背景にあるものは、「人生100年時代を見据えたリカレント教育のプラットフォームを構築する」というビジョンです。具体的にはアビタスやTCJにとどまらず、広く人材関連領域で高い付加価値を有する企業をグループ化し、学習インフラの整備と就職支援などを一手に担うプラットフォームを構築していきます。まずはアビタスやTCJとの高いシナジーが見込める企業からグループ化していく予定です。

こうした構想を踏まえて、アビタス・TCJはこれまでにも実施してきた就職支援事業に、TCJは退職後の人材を対象とした日本語講師養成講座の拡充にも力を注いでいきます。いわば「資格取得支援の学校」から「キャリア開発支援企業」へと、事業内容を再定義する試みです。これは企業の成長にとって、大きなチャンスになるでしょう。AP は事業内容の再定義を契機として、指数関数的な成長を遂げた企業を数多く輩出してきました。今後数年で、アビタス・TCJも大きな飛躍を遂げることが見込まれます。